イギリスでは、5歳から16歳までの11年もの間、義務教育が無償となり子どもを育てやすい環境が整っています。
イギリスにいて感じたことは、街でおむつ換えや授乳で困っているママがいると、見かねたベテランママが声を掛けて、手伝ってくれる国であり、
3歳以上からイギリス国籍かEU加盟国籍の親であれば、公立保育園が無料で子どもを預かってくれます。
プレイグループといって、子供が集団で遊びながら社会性を身に着けさせる公的制度もあります。
チャイルドマインダーの資格を持つ人が、生後8カ月から8歳までの子供を自宅で見る保育制度もある充実ぶりです。
イギリスと日本の保育環境に違いはどこにあるのでしょうか?
待機児童問題を解決キーは「家庭的保育」にある?
現在日本では、保育園への入園を待っている待機児童の解消が急がれています。
対策の一つとして注目されているのが、家庭的保育(保育ママ)かなと思います。
平成20年に法が改正され児童福祉法に位置づき、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」では、「小規模保育サービス」に組み込まれましたね。
このシステムが始動することで、指定された事業者を通じて、主に3歳未満児の需要に応えるとのことでした。
新システムは、「多様な事業者の参入による基盤整備」を語っているので、それに伴って保育者に求められる資格要件も多様化することがわかります。
これらのことがあり、家庭的保育においての「保育の質」の保証はどうなるのかと疑問を感じましたが、制度案要綱には詳しい記載がありませんでした。
これらのことについて、イギリスから学ぶことがたくさんあるように感じます。
イギリスは、保育サービスを充実させる対策として家庭的保育を積極的に活用しています。
また、並行して家庭的保育の質を保証する仕組みを整備しているそうです。
家庭的保育の日本と英国を比較
イギリスでは家庭的保育をチャイルドマインディングといい、それを支える人たちのことをチャイルドマインダーと呼ばれています。
実はここにも日本とは、大きな違いがあります。
チャイルドマインディングには、少しの例外を除いて、自治体による委託や費用の公費負担の仕組みがありません。
この点については、3歳未満児の施設型保育も同じようで、昔は公費負担を伴う保育サービスの利用を、危機的状況下の子どもに限ってきたようです。
だから1970年代頃の保育サービス不足は深刻な状況でした。
親は、空きのある保育園やチャイルドマインダーを自分で探して、全額自己負担で子どもを預けるほかありませんでした。
しかも、いろんな保育園などの事業者が混在しているので、「保育の質」にバラつきがあり、「安心・安全」とは言えない状態だったそうです。
今の日本がそんな気がします・・・
でもこれって、イギリスでは1970年頃と、約50年前の話なんですがね・・・
日本は何をやっているんだろうか;_;
ちなみに、チャイルドマインディングは私的契約に基づく保育サービスです。
保育時間、保育料、給食の有無、他の機関や習い事への送迎など、全てが当事者間の直接交渉で決まるそうです。
このように融通が利くことから、使い勝手がいいサービスだったため昔から広く利用されています。
英国の現在のチャイルドマインダーの実態
現代のチャイルドマインダーは1日2時間以上、自分の自宅で子どもを預かる登録制の自営業者のようです。
私(けんさん)が知る当時の内容であれば、2007年頃は約7万人のチャイルドマインダーが30万人の保育を負担していました。
その後、登録義務の徹底が図られたようで、仮に親しい友人との間であってもチャイルドマインダーに登録していない未登録者による謝礼を伴う保育は違法のようです。
英国ではチャイルドマインダー登録には審査費用がかかり、登録後は登録維持費を毎年英国政府に納めなくてはいけません。
家庭的保育で日本と英国の違いが最もあるのは、保育者自身が抱える乳幼児の扱いかなと思います。
日本だと「6歳未満児のいないこと」が求められているようですが、イギリスでは学齢未満(5歳未満)児がいても全く問題ありません。
昔英国の人に聞いたのが、「子どもが小さいうちは自分で面倒を見たい、適当な預け先がない、だからチャイルドマインダーになった」ということをよく聞きました。
実は、1人の保育者が預かることのできる人数にも日本と英国では全く違います。
日本では、
0歳児:概ね3人に保育士1人~
1、2歳児:概ね6人に保育士1人~
3歳児:概ね20人に保育士1人~
4、5歳児:概ね30人に保育士1人~
になっています。
イギリスでは、5歳未満児は3人以下(うち1歳未満は1人だけ)となっています。
それに加えて5歳以上8歳未満児は3人まで、8歳以上なら保育に支障のない限り、何人でも預かっていいとのことです。
チャイルドマインダーが学童保育要員だなと感じます。
チャイルドマインダーの仕事ぶりは?
チャイルドマインダーに家庭的保育の考え方などを聞いてみると、日本で見聞きしたのとは全く違うなぁと感じました。
この時聞いた、ご家庭は5歳の娘と3歳の息子の子育てをしながら、12人の受託契約を結んでいるというチャイルドマインダーさんです。
預かる頻度と時間帯がバラバラなので、一覧表を作って、家にいる子どもが規定数を超えていないか、いつもチェックしているそうです。
学校が長期休暇中の時は、8歳未満児6人に加えて、8歳以上児が何人か家にいることもあるそうです。
また、娘さんが友達を家に呼べるようにと、上限いっぱいまで預からない日を設けるなど、娘さんへの配慮も忘れてはいませんでした!
保育の質の保証に向けた英国政府の取り組み
では、旧労働党政権は、チャイルドマインディングの保育の質の保証に向けて何をしたのでしょうか?
ちょっと政策をたどると、1998年に「チャイルドケア戦略」を発表。
包括的な保育拡充策を提示。
1998年に認証チャイルドマインダー制を導入して、一定の要件を満たしたチャイルドマインダーを教育提供者として位置付け。
認証チャイルドマインダーを施設型保育事業者と全く同等に扱い、「就学前教育補助金」を受けられるようしたようです。
合わせてチャイルドマインダーのNCMAと協働して「質の認証制度」を創出し、自治体ごとのチャイルドマインダー・ネットワークを育成したそうです。
自治体には、保育需要の査定と、需要を満たす以上のサービスの確保を要求。
自治体を介して補助金を支給してチャイルドマインディングの安定供給に育む。
2000年に、「8歳未満のデイ・ケアとチャイルドマインディングに関する国基準」を制定。
学校査察を業務としてきた「教育水準局」の監督下にチャイルドマインダーを置きました。
登録から不適格者排除の全てに必要とされる審査を教育水準局に委ねたようです。
このようにしてチャイルドマインダーは、学校教育機関や施設型保育事業者と同基準で、3年に一度は教育水準局の査察を受けることになったようです。
これが原因で、チャイルドマインダーの自分自身が価値ある者という気持ちを高めたようです。
更に、査察の結果は他の査察対象と同じく、個人名は明記せずに記録番号で、ウェブ上に公開されます。
またそれらと同時に、「家庭情報サービス」窓口の開設を自治体に義務付けて、地域に存在する保育サービスの情報提供を確立させました。
チャイルドマインダーを探すご家族が、窓口で連絡先リストを入手すると同時に、リストに載っているチャイルドマインダーの教育水準局査察の結果を契約時の判断材料として使えるようにしているようです。
保護者の安心感は、飛躍的に高まったと思います。
また、孤立しそうなチャイルドマインダーの支援体制も整備したようです。
イギリス政府は2004年以降、地区ごとのチルドレンズ・センター設置を推進していて、そこにチャイルドマインダーが受託児を連れて集まる場を作ったそうです。
保育経験が豊かな支援員を配置して、遊びのモデルを示したり、仕事の相談にのったり、おもちゃを貸し出したりしているそうです。
チャイルドマインダー同士の仲間作りの場ともなっています。
チャイルドマインダーの社会的な地位上昇の仕組みも整えています。
2006年に乳幼児専門職位という教員免許と同等くらいの扱いになる保育職資格を設立し、公費補助による養成を開始しました。
資格がない状態から出発して、現任教育を通して保育職資格に到達するキャリアまでの道筋を完成させたのです。
英国と日本の保育環境に違いまとめ
イギリスの旧労働党政権は、保育の質を保証する網を何重にも張り巡らせて、チャイルドマインディングの質の向上に尽くしたことがうかがえます。
ただ、こうした保育の質を向上させるためには、毎年チャイルドマインダー査察の費用や、教育水準局職員の人件費、査察結果の公開や周知するための経費など、イギリス政府の負担は莫大です。
国が保育の質を維持することの大変さを、イギリスの例は教えてくれたような気がします。
また、今は日本でもチャイルドマインダーは普及しつつあります^^
チャイルドマインダーは保育士の資格を取得するよりも、比較的取得しやすくまた今は国を挙げてチャイルドマインダーの活躍の場を拡大しています♪
また、保育士資格とは別でチャイルドマインダーの資格を取得することで、働く場の拡大と給料面でのアップを望めるようで今人気の資格になっているようです(*´﹃`*)
最後まで読んでくださってありがとうございます^^
今日も笑顔が一つ増えますように^^